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転倒事故統計

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公共空間における転倒・転落事故の経年変化と将来予測

1.はじめに

 施設の安全管理についての意識の高まりとともに、私たちは転倒・転落事故をなくし快適で安心して暮らすことができる街づくりを目的としています。
 公共建築空間における安全対策を講じるために、事故の実態を知り、そして長期的に観察していくことが非常に重要です。しかしながら、現状で日常災害に関する統計が十分であるとは言えません。
 そこで、転倒・転落事故に関するデータを、人口動態統計(厚生労働省)を用いて数値化し考察することで、事故の実態を明らかにしていくとともに、事故減少への対策に役立てていきたいのです。この考察を通して、安心して暮らせる街づくりのための第一歩が踏み出せることを願っております。


2.人口動態統計について

 人口動態統計は、厚生省大臣官房統計情報部によって行われている調査です。 この統計の死亡原因は、WHOによる国際疾病分類(ICD)に基づいて分類されています。 現行の死因分類は、ICD_10に基づき1995年から最新の2004年まで使われているものです。 このICDとは、死因分類の国際統一のために1900年に初めて規定され、 その後は約10年ごとに改定が行われています。


死因分類のうち、日常行動における転倒・転落に関する死因(ICD_10)


死因基本

死因

コード
(転倒・転落)

W01

スリップ、つまずき及びよろめきによる同一平面状での転倒

W03

他人との衝突又は他人に押されることによる同一平面状でのその他の転倒

W10

階段及びステップからの転落及びその上での転倒

W13

建物又は建造物からの転落

W17

その他の転落

(生物によらない機械的な力への暴露)

W23

物体内又は物体間への補足,圧挫,圧入又は挟まれ

W24

持ち上げ装置及び伝達装置との接触,他に分類されないもの

(生物による機械的な力への暴露)

W51

他人との衝突

W52

群衆又は人の殺到による衝突,押され又は踏まれ

 建築物内または周辺での日常行動に関連すると考えられる死因の中で、公共空間を発生場所とする死因は、「転倒・転落」が圧倒的です。 以下では、転倒・転落に関する5項目を対象とします。


【1995~2004年】
 ICD_10では、転倒・転落事故の死因について、発生場所を表1のように10に分類しています。 それをグループ化したものが以下の4項目です。

(0) →家庭
(1),(2),(3),(5) →公共的建築空間
(4) →街路等
(6),(7),(8) →その他

医師へ死亡診断書の回答を依頼する際、発生場所が【家庭・街路等・建築現場・その他】の項目に分かれていますが、 【その他】と回答しただけで、発生場所の詳細を記入していない場合が考えられます。 そこで、(9)「詳細不明の場所」の死者数を0(家庭),4(街路),6(建築現場)以外の項目に分類して、 それぞれに加えた数を死者数として考えます。


ICD_10
(0)家(庭)
(1)居住施設
(2)学校、施設及び公共の地域
(3)スポーツ施設及び競技場
(4)街路及びハイウェイ
(5)商業及びサービス施設
(6)工業及び建築現場
(7)農場
(8)その他明示された場所
(9)詳細不明の場所

3.25年間の転倒・転落事故死者数の変化

図1 転倒・転落事故死経年変化(1979-2004)

 図1は転倒・転落の総数の1979年から2004年までの25年間の変化を示したものです。 1994-1995年間に大幅な差があるのは、1979年から1994年まで使用していたICD_9と、それ以降使用しているICD_10の死因コードの改定、及び死亡診断書様式の変更があったためです。  全体として言えることは、ここ20年ほどで転倒・転落事故死者数が増加傾向にあるということです。

4.年齢階級別にみた転倒・転落事故の死亡率

○転倒・転落による死亡率仮定値
下の表は1995年以降の10年間の人口動態統計による年齢階級死亡表をもとに、 各年齢階級の転倒・転落による死亡率を分析し、仮定したものです。 15歳以上では、年齢が高くなるほど死亡率が高くなる傾向があり、 15~44歳に対して、80歳以上の高齢者が死に至るリスクは100倍以上にもなっています。

転倒・転落による死亡率仮定値図2 転倒・転落による年齢階級別死亡率の推移

 上の図2は、転倒・転落による死亡率を更に分析するため、45歳以上に焦点を当てたものです。45~64歳及び65~79歳については変化が少ないですが、80歳以上の死亡率は変化が大きくなっています。


 右の図3は、図2における80歳以上の高齢者に占める、年齢階級別割合の推移を示したものです。
このグラフからわかるように、80歳以上の高齢者に占める85歳以上の割合の推移は、 図2の80歳以上の高齢者の転倒・転落による死亡率の推移と、対応しています。
これは、高齢化の進行が死亡率を押し上げたと推測することができます。

図3 80歳以上に占める各年齢階級割合の推移

5.転倒・転落事故の将来予測

 転倒・転落による死亡事故率仮定値を基に、2005年から2055年までの死亡死者数を予測したものが右の図4です。
日本では現在人口減少が進行していますが、今後10年間での減少幅は約3000人と推測されています。
この間、公共空間における安全性の水準が変わらないとすると、死者数は年間約120人も増加し続け、2015年には4000人に達してしまう可能性があるのです。

図4 転倒転落による死者数の将来予測

6.最後に

 以上のように、日常災害の実態を探ってみると、予想以上に、 転倒事故でかけがえのない命を失ってしまっている人々が多いという結論にたどり着きます。 日常災害のほとんどは転倒・転落事故に起因しているのです。高齢化に伴い、 今後さらに転倒事故発生の可能性が高まっていくことでしょう。 しかし、このような事故は決して防げないものではありません。 社会全体での取り組みとして、施設などの安全性を高めること、そして何より一人ひとり意識を持つことが転倒事故の減少に繋がっていくのです。
 この考察が、今後の転倒事故防止に少しでも役立てば幸いです。


参考文献:「公共的建築空間における転倒・転落事故死者数の経年変化と将来予測」
国土交通省 国土技術政策総合技術研究所 河野 守