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施設安全管理者の皆様へ

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施設安全管理者の皆様へ

商業ビル、店舗、マンションなどの各施設の運営・維持管理を行っていくうえで、 滑り止めを始めとした建物内外の安全対策はこれまで以上にその必要性を問われるようになってきているのではないでしょうか。

PL法施工以来、施設の管理責任の所在の明確化を求めるなど社会的意識が大きく変わってきました。 建物管理の不徹底による怪我や事故が死亡事故につながるなどトラブルが発生するというニュースが頻繁に報道されるようになってきています。

こちらのページでは、実際の転倒事故に関する訴訟事例と当協会の学士会員でもある池袋中央法律事務所 依田弁護士の見解をご紹介させて頂きます。 今後、施設の運営・維持管理を行っていくうえで少しでも施設の安全管理をされている皆様のお役に立つことができれば幸いです。


ケース1東京地裁判例

「スポーツクラブ施設内の廊下における滑りによる転倒事故で原告(転倒者)勝訴。
スポーツクラブに332万円の支払い命令。」1997年2月

事故発生当時、施設各所にプールからあがった利用者が足を拭くためのマットがおかれ、 階段の踊り場には体を拭くように促す注意書きが提示されていた。 しかしプールやシャワーを利用後、水着が水分を含んだ状態で利用者が廊下を通行することがあったため、 利用者の体から落ちた水滴が床面に飛散して滑りやすい状態になっており、 利用者は素足で廊下を通行するので転倒し、受傷する危険性があった。 係員は1時間おきに巡回して廊下の水分を取るなど入念な清掃を行っていたが、 清掃前には危険を防止する措置が執られていなかったことから施設側に瑕疵があると判断がなされ、 東京地裁はスポーツクラブに対して332万円の損害賠償の支払い命令を出した。


ケース2大阪高裁判例

「コンビニ内での滑りによる転倒事故で原告(転倒者)勝訴。
コンビニ・フランチャイザーに115万円の支払い命令。」2001年7月

大阪市内のコンビニで買い物中の女性が転倒し、左腕を縫うケガをした。 この事故に対して判決は、コンビニは、不特定のお客を相手にする以上、 お客が急いで早足になったり靴底が減ったりしていることも前提にしなくてはならない。 さらには乾燥時とくらべると湿潤時には、C.S.R.値※が大きく異なり濡れると滑りやすい床を張っていたと指摘しており、 安全確保のため水拭きの後から空拭きするなど、お客が転ばないよう店舗経営者らを通じて指導する義務があったとして、 大阪高裁は、慰謝料の支払いなど115万円の支払いを命じた。

※C.S.R.値は「東京都まちづくり条例」でも定められている床材の滑りの評価指標です。


ケース3東京地裁判例

「駅ビル構内での転倒事故で原告(転倒者)勝訴。
施設側に損害賠償2,200万円の支払い命令。」2001年11月

駅ビルの飲食店街来客者用トイレ付近を通行中の主婦(69歳)が転倒、 左足を骨折し左股関節の機能が失われる後遺症が残った。 東京地裁はこれに対し、低コストを業者に強要するあまり清掃も不十分ではなく、 また飲食店の厨房で使用していた油や水が床面に付着し滑りやすくなっていたことが原因であるとして、 駅ビルに対して2,200万円の支払いを命じる判決を出した。


ケース4東京地裁判例

「チケット売場での転倒事故で原告(転倒者)勝訴。
施設側に損害賠償264万円の支払い命令。」2006年9月

雨の日に、チケット売場敷地内を歩行中、歩道との境界線として敷かれていた縁石の御影石の上で足を滑らせ転倒し、腰や膝などを捻挫した。 転倒した男性は、施設側に損害賠償を求め、それに対し東京地裁は「歩行者が転倒する無視しがたい可能性をはらんでいた。 (御影石の)設置・管理には瑕疵があった。」として施設の過失を認め、264万円の支払を命じた。


ケース5大阪高裁判例

「スーパー店内の水たまりでの転倒事故で和解成立」2008年5月

関西スーパーの店内にあった水たまりで足を滑らせて転倒し、けがをした大阪市の男性(61)が、 約2600万円の損害賠償を求めた訴訟があり、350万円を支払うことで和解が成立した。 1審大阪地裁は「店側に落ち度があったとは認められない」と訴えを退けたが、 高裁は「事案の実情を考慮し、和解による解決が相当」としていた。



当協会学士会員 池袋中央法律事務所 依田弁護士の見解

 「先に挙げた5件に限らず、しばしば建物の施設内で、 利用者が転倒したことによりけがを負ったという事故について、 その施設管理者に対して、転倒した方に対しての損害賠償責任を認めた判決が出ております。

 普通、事故に対しての賠償責任が認められるためには、 加害者側に過失が認められることが必要であり、なおかつ、 その過失の存在については被害者側が証明しなければならないとされております。

 しかしこの種の転倒事故については、民法717条1項により、一つ一つの事故について、 それを回避するために何ができたかという過失の有無は問題とされず、 そもそもそのような危険な工作物を危険なまま放置していたということに着目して責任が問われてしまうのです。 極端な話し、事故が発生してしまったらもはや責任は免れないと覚悟したほうがよいのです。 もちろん実際には、歩行者が転倒する危険がなかったか否かを巡って、訴訟で争われることになりますし、 民法717条1項但書から、施設管理者が所有者ではない場合には、事故の発生を防止するために必要な注意を尽くしていれば免責されることにはなっています。 しかしそれでも普通の事故とは逆に、必要な注意を尽くしたことは施設管理者側が証明しないといけないのです。被害者側が証明する必要があるのか、 加害者側が注意を尽くしていたことを証明しなければならないのかの違いは、実務上、極めて大きな違いです。なにかしら、 至らない盲点の指摘を受けてしまって、責任ありとされてしまう可能性は非常に高いと思います。 普通の事故の場合よりも施設管理者に対しての責任は重いものとされていることは是非、認識していただく必要があります。  「転ばぬ先の杖」とは、正に、このことで、施設管理者としては床が滑りやすくなるようなことがないように日頃から、 しっかりと気を配っておかなければならないわけです。」



保険会社からの報告・見解

ある保険会社の統計では、転倒による傷害事故は年々増えており、 現在では年間200件が賠償事故につながっています。 この数字は氷山の一角で、その背景には賠償事故に発展していないケースも含めると転倒による傷害事故の数はさらに多くあると思われます。

不特定多数のお客様が出入りするような商業施設等での転倒事故の場合、 施設側は経済的・精神的なブランドイメージのダウン、風評被害を最大のリスクと考え、 客足が遠のくことを防ぎたいとの考えから被害者(お客様)優位であり、 施設側に過失がない場合でも治療費用、見舞金などをお支払いするケースが多く散見されています。

あらゆる施設におきましては当然のことではありますが、 事故が起こらないよう未然に転倒防止策を設けるなど、 防げるものは防ぐ必要があると思います。